魔法少女と黒杖特捜

2chライトノベル板にて、魔法少女リリカルなのはに対して、

カードキャプターさくらブラックロッド

というフルハシ以上の禁断の組み合わだからな……

…なんて書き込みがあったので見てみました。
なるほど影響下でした。


まあその話は置いておいて、とりあえず感想をば。

魔法少女リリカルなのは(A's) 感想

じつに面白かった。特に少年漫画的な対決(バトルと書いたほうがニュアンスが近いか)が真ん中にでんと座ってからは、魔法少女モノ、という単語はどっかに行ってしまって先入観がどうのという話ではなくなっていたなあ。どんどん先が気になるので、あっというまに見終わってしまった。


で、物語が実に良かった。たとえば主人公は“魔法の力”を得ることになるわけだけれど、力を得たことで負わなければならない責任をテーマにしたエピソードがひとつ入っていて、*1ベーシックなテーマではあるものの、最近の作品でこういう視点がある作品てあったかな? と思い、またこのエピソードで脚本さんへの信頼感というのはかなり増しました。


物語としては、第一期のものよりも、第二期(A's)のもののほうが面白かったか。
それはアクションが派手で見た目が楽しいということに加えて、悲劇的な結末を予想させつつ、各人の思惑が錯綜して着地点を容易に見出させなかったり、ショッキングな(たとえば主役が腹部を貫かれる、というような)シーンでうまいこと興味を繋いでいった、まあそういう部分によるもの。それだからこそ、ちょっとした奇跡によって悲劇がひっくり返されたクライマックスは盛り上がった。
ちなみに私は、仮面の人物の正体を「クロノの死んだはずの父が生きてた」というベタベタな線で予想していたため、最後まで正体がつかめんかった。あのあたりの情報開示の段階の踏み方も見事で、提督が黒幕(ある意味で)と知ったときには「この老害が!」と思わずつぶやいてしまった(苦笑)。


不満点もなくはないですが。
たとえば変身シーンでの裸の描写が露骨過ぎて趣味に合わんかったとか。
A'sクライマックス、闇の書を宇宙へ放逐するシーンが緊迫感にかけるとか。
A'sのクライマックスでは、クロノの計画に従って闇の書のアレを削るわけですが、プランがプランどおり遂行されるというのはドラマ性がまったくないわけで。結果として必殺技見本市に過ぎなくなっている。
単に、プランに齟齬を生じてそれを取り返すために主役三人がリスクを負う、という展開にするだけで何倍も盛り上がったと思うんですが。加えて言うなら、闇の書=リーンフォースが消滅するエピソードがこのシーンの後、一段落してから描かれるわけですが、それをするぐらいだったら、闇の書のアレを放逐するという困難なミッションの中での犠牲(贖罪のための自己犠牲という意味合い含む)という片付け方もできたはずで、わたしゃそっちのほうが良さそうに思うんだなぁ。


ブラックロッドの影響

で、ブラックロッド古橋秀之)からの“影響”の話。ぶっちゃけ、魔法周りのギミックの根っこはほぼブラックロッド経由でしょう。

  • 呪文=実行コード、魔法とプログラミング(ソフトウェア科学)のアナロジーというアイデア
  • 魔法の杖を銃身に、杖の先端を銃口とみなし、杖の先端から呪文を発射するというモチーフ(杖を媒体として呪文詠唱を省略するのも?)
  • 黒い衣装で、法と秩序の守護者として特権を持っているキャラクターの存在(黒杖特捜官と時空管理局執務官の類似)

このへんが被るわけですが、このへん、ブラックロッドの特徴的なギミックなんですね。で、

  • 魔法使いが力あるものとして主役に立つ世界観。ときに魔法使い同士の対決が主題となる

このメインモチーフが被っているため、並べるとどうしても類似点が気になります。
ブラックロッドと、やはりブラックロッドの影響下にあるウィザーズ・ブレイン三枝零一)、ストレイト・ジャケット榊一郎)あたりをうまく組み合わせてやれば、だいたい、リリカルなのはの魔法ギミックの原型はできあがってしまいます。
(たとえば“ベルカの騎士”は、対人戦闘に特化した存在と解説がありますが、ウィザーズ・ブレインにはまんま対人戦闘に特化した“騎士”というクラスがあり、剣型のデバイスを持って戦いますし、デバイスへの弾丸の装填のイメージや、空薬莢の排出のイメージは、ストレイト・ジャケットで繰り返し描写されています)


まあ、設定だけで勝負するならもうちょっと原型が分からないように組み合わせて欲しいところですが、映像作品ですからいいんじゃないでしょうか。


というか、このアニメ、どうも見たことのある、自分の記憶にひっかかる要素がちらほらと出てきて、この作者とは興味方向が近いんかなー、同年代か? と勘ぐったり。


たとえば、

まんま、銃夢木城ゆきと)の、イド先生のロケットハンマーですね。
闇の書にフェイトが取り込まれて夢を見させられるシーンも、そういえば同じようなシーンが銃夢にあったり。(ウロボロスの夢)

  • 呪的に主人に依存した4人のしもべ

たぶんFate/stay nightの英霊が元ネタだと思いますが、私は『O・TO・GI 〜百鬼討伐絵巻〜』(フロムソフトウェアのゲーム、サイトはhttp://www.o-to-gi.net/)における、ライコウ四天王を連想しました。魔力に依存して存在する、現世と幽界のはざまに位置する不安定な存在。

  • 情報を集め続けるために生み出された存在が、集めた情報の巨大さによって変質してしまい、災厄と化す

たとえばマップス長谷川裕一)の伝承族とか。

これはもう、リュウキ以降の仮面ライダーに頻出するシステムヴォイスが発想の元でしょう。
片言のAIを乗せたのがアイデアモノだったと思いますが、喋る剣の類は昔からあるので、まあ。


なんといいますか、結果として私の好きなギミックがよく登場するアニメです。
そんなわけで。来年のStrikersも楽しみにしております。
さすがに呪文をジャグリングしながら「ク、ハ」とか笑う悪役が出てきたら怒りますが、まあそれはないでしょ。

*1:「力は呪いだ」と言い切ってしまう映画版スパイダーマンほどシビアなものではないですが