DARKER THAN BLACK -黒の契約者- アニメ感想

今期唯一全話見通したので、せっかくなので感想を。

とりあえず概略。DARKER THAN BLACK(以下DTB)は、超能力者によるスパイものアニメ。主人公黒(ヘイ、中国語読みなわけ。黒の契約者、とは彼のこと)とそのグループは、所属する諜報組織からの命令によって、他の諜報組織らとスパイ戦を繰り広げる。焦点となるのは、ゲートと呼ばれる特異な空間とそこから得られる知識、技術だった。契約者と呼ばれる超能力者もゲートからもたらされたもので、契約者同士の争いが主要な見せ場のひとつである。
基本的に前後編で一話、つまり1時間枠でエピソードが語られる。


で。最初に結論を言ってしまうと、個々のエピソードを単体で見れば佳作、シリーズを通しての物語という視点で見ると駄作。そんな作品。


個別のエピソードは、一時間枠で区切りを取って作っているのが上手くいったのだろうか、できのよい物が多い。スパイものと言いながら、実は結構ウェットな部分も多く、主人公である黒(ヘイ)の表の顔、裏の顔という二面性とあいまってそれが上手く噛み合う。多くはその結末において希望のある方向へ向くのか、それとも救いの無い終わり方となるのかというのが最後までわかりにくく、ために緊張感がある。特にシリーズ序盤のエピソードはよいものが多い(あえて選ぶとしたら「契約の星は流れた」「壁の中、なくしたものを取り戻すとき」あたりを推す)。とはいえ後半になると、やや人情話的な部分が鼻につくような部分もあり、オチの付け方に安易さを感じることも。ま、あとは殺陣や超能力の表現といったところは地味だけどとてもエッジが利いていて私の好みでございました。


問題は、シリーズを通して縦糸として設置されている部分。序盤、主人公の動機付けとして「妹を探す」というのが出てくる。当然、主要な伏線だと思いましたさ。なのだが、それに対しては結局まともな回答が出されずに終わるのだ。最終回に脳内空間で妹と対話して、「妹はあなた(黒)の中にいるわ」みたいな結末。この部分がまず納得いかない。
そして、代わりに最終回のテーマとして出されたのが、「人類と契約者の共生」というもので、エンディングもそれにそって流れるのだが、そんなテーマ、序〜中盤で一度でも語られましたっけ? 終盤においても、それが主題であると認められるような丁寧な書かれ方されてましたっけ? というところで盛大にずっこけた。
おまけに、である。「契約者によるスパイアクション」と「人類と契約者の共生」の間の絶望的なまでの溝を埋めるためになにかやたらと設定が盛り込まれるのだな。特につらいのが「主人公が特別な契約者であり、人類と契約者の命運を左右しうる能力を持っている」というやつで、これに関する説明がなにもないのである*1。最終回の最後のほうまで解説役の博士がキィキィ声で設定を「説明」していたのには脱力した。


正直なところ、この作品は「人類と契約者(超能力者)の共生」というような全人類的なテーマを扱えるようなスケールの大きさは備えていなかった*2。スケールが大きくない、というのは別にけなしているわけではなく、この作品は主人公およびその周囲の人間たちの、個人的な物語を語るのにちょうどいいスケールだった、のだと思う。最初から最後まで「妹を捜し求める」という線で展開し、「妹と出会って主人公がどう変化するのか」を結末として持ってくれば綺麗に終わったろうに。そのオマケとして(クライマックスへの箔付けに)、なにか大きな事件が起こってもいいだろうけれど、主題はあくまで主人公の属人的なものであれば。


この手のテーマの投げっぱなし、あるいはすり替えは、正直かなりつらい。設定の齟齬なんかは余程でなければ気にしないのだが。

*1:一応、妹の能力を取り込んだためと説明されているが、では妹はなんでそんな能力持ってたのか、という説明はなされない。

*2:ていうか同時期にやってた「地球へ…」の主要テーマなのがまた…